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世界を食べたキミは無敵。

小さい頃おいしゃさんごっこをして遊んでいて、いつか大人になってもずっと続けている、そんな人生

セールで手に入れたものは、可愛いワンピースだけじゃなかった。

他愛もないこと

世間ではセールをやっているみたいですね。今シーズンはほとんど洋服の買い物をせずに、ここまで過ごしてきました。今まではかなり洋服に散財してきていたので、さぞかしお金が溜まっているだろうと思うのですが、通帳をみても特に代わり映えしない残高です。何に消えていったのだろうと、少しずつ溶けてゆくあずきバーをなめながらぼーっと空を眺める日曜の昼下がりです。

あー久しぶりに予定のない1日だなあと思ったのですが、そういえば昨日も同じことを考えたのを思い出しました。昨日もごろごろして終わったんだ。

したら、こんな風にいつの間にかなくなってしまうあずきバーのような日曜日を過ごすのはなんとなくもったいない気持ちになって、久しぶりにデパートへ行ったんです。

 

特に買いたいものがあったわけではないので、化粧品コーナーとか、雑貨売り場とかふらふらしていました。ふんふん、こんなものが新商品で出ているのね。けど買うほどでもないかなあ。で、世間ではセールをやっているみたいですね。したら、やっぱり服屋さんに入ってみちゃいますよね。わたくし御用達のお店に入るわけです。

 

そのお店は少し高めのお洋服が置いてあるお店なので、ほいほいと気軽に買えるような感じではないのです。だいだい、ぐるりと1周並べてあるお洋服を眺めて、お店の片隅でお財布の中身をこっそり覗いてためいきをつくのです。ふう、買えない。

まず、かろうじて手が出せるかもしれないお洋服を手に取ります。そして鏡の前で合わせてみるのですが、いまいちです。

次に、お店のなかで1番可愛いワンピースを手にとって、買うならこれだなあと思い、ちらりと値札をみます。すると、これがまたびっくりするほど高いんです。かろうじて手が出せるものの4倍くらい。けれど、ここで私は何とも言えない高揚感というか、勝った・・!という気持ちになるのです。『ああ、やっぱり、自分には服を見る目があるのだ』と。自分の選んだものは、やはりそれだけの価値があるものだったのだと。

そうして、何も買いはしないのですが、『勝利』を手にしてお店を出るのです。まだまだ私の力は衰えていなかった、と。

 

 

普段ならそういう風にしてお店を後にするのですが、今日は違います。今日はセールです。店内に張られている黄色の『30%OFF!』『50%OFF!』のチラシ。びっくりするほど高いワンピースが50%OFFとかになっていると、かろうじて手が出せる値段の2倍なんですけど、カードの分割2回払いで買えばまあなんとかなるかな・・となるのです。

 

今日もそんな感じで、可愛いドットワンピースと、黄色のフリルシャツを見つけました。買うならこれかなというやつ、2枚。黄色のフリルシャツはかろうじて手が出せる値段だったし、汎用性の高いデザインだったので買い決定です。でも困ったのはもう一つのドットワンピース。黄色のフリルシャツの3倍もの値段なのです。とても可愛いのですが、いかんせん高い。高すぎる。

 

うーんうーんと鏡の前でうなっていると、そろそろと店員さんが近づいてきます。『それ、可愛いですよね~!とってもお似合いですよ。』

と私を落としにかかってきます。けれどこの台詞は買い物においては『こんにちは』くらいの意味しか持ちません。ぐっ・・買ってしまおうか・・となるようなダメージは0です。店員さんは続けます。

『袖がきゅっとしぼってあるところが、ポイントなんですよ。』

むむむ?よく見ると確かに袖のところが切りっぱなしではなく、ほわっとフリルのようになっています。これは少し惹かれるかも。他にはないデザインなんです、ここがポイントなんです、といったアピールは私に少しのダメージを与えます。

『先ほど着られたワンピースもすてきでしたけれど、私はこちらのほうがよりお似合いだと思います。』

実は、私はこのお店でドットワンピースの他に、水色のワンピースを試着していたのです。けれど水色のワンピースは少し膨張してみえて着やせ効果がいまいちでした。色も少しくすんでいて、顔映りが悪くみえました。反面、ドットワンピースは私の身体にフィットして、ボディラインをとても綺麗に見せてくれました。明るい色だったので顔映りもよかったのです。

ところで、このように2枚着てみて、こちらの方がお似合いですよという手法は、お客さんの財布をゆるめるのにとても効果的だと思います。比較対象があることによってうまれる『もうひとつより良かった』という思いが『買ってもいいかなあ』という気持ちを強めるのです。比較対象が触媒のように働くのでしょうね。

 

で、話を戻すとですね。

私はここでふと似たような色のワンピースをすでに持っていたことを思い出しました。デザインはもちろん違うのですが、他人から見ると同じ服を着ているように思われそうなワンピースです。

これは私の購買意欲を一気に落としました。わざわざ高いお金を払う価値は、この目の前のドットワンピースにはなくなったのです。私は素直に店員さんに言いました。

 

『そういえば、似たようなワンピースを、もう持っているんですよ。』

 

多くの店員さんは、ここで、『ああ、そうですか・・。そしたら、こちらのワンピースなどはどうでしょう?』といって違うワンピースを持ってきます。あるいは、『似たようなものをお持ちなら、こちらのカーディガンなんてよく合いますよ』そのワンピースに似合うカーディガンのような小物系を持ってきます。

しかし今日の店員さんは少し違うことを言いました。

 

『あら、そうなんですねえ。けっこう、お客様のなかにはそのように言われる方も多いです。やはり、好みがありますので似たようなお洋服を選ばれるのでしょう。けれど、セールで安くなっているからと普段の好みと違う雰囲気のお洋服を買われても、結局着なくなることが多いんですよ。そうしたら、やはり似たような雰囲気でも、着る機会は減ったりしないものですよ。』

 

 あ、なるほど・・。言われてみれば、確かにそうです。セールで安いからと普段着ないようなデザインや色のものを買ってみても、やはり普段着ることはなくタンスの肥やしとなっているたくさんのお洋服たち。少し背伸びして買ってみたシックなワンピースは、背丈が追いついたころには時代遅れだったりします。

私は店員さんのこの説得で陥落し、見事黄色いフリルシャツとドットワンピースを購入しました。少し高い値段は、店員さんの話術に支払う対価だと思ったら、まあこんなものかと納得し、店員さんあっぱれだなあと晴れ晴れした気分でお店を後にしたのでした。