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世界を食べたキミは無敵。

小さい頃おいしゃさんごっこをして遊んでいて、いつか大人になってもずっと続けている、そんな人生

故郷を離れた、7年前の私へ。

地元を離れて、はや、7年が経とうとしています。

私は、日本を北海道・本州・四国・九州地方の四つの島に分けたとした時に、地元のある島から、別の島にある大学に進学しました。


同じ日本であっても、陸続きでないと帰省するのは一苦労です。私の場合は、車なら10時間、新幹線・電車を使っても7時間かかる所にあり、費用も馬鹿にならないので、学生時代にも年末年始すらそうそう帰れませんでした。帰るのは年に1・2回で、さらにその間に新しく実家が建て替えられたりしており、自分の家に帰るんですけれどもあまり慣れ親しんだ家ではなく、帰省してもそれほど懐かしいという感じはしません。

私が過ごしてきた小さな街の雰囲気は、7年経っても、それほど変わっていないように思えます。相変わらず家の前には濁った川が流れており、ブラックバスだか鯉のような魚が泳いでいます。小学校には私が小さい頃に遊んだのと同じままの古臭いジャングルジムがあり、かつての私のような小さな子どもたちが同じように遊んでいます。やはり今でも四方は山に囲まれている田舎で、夏には蛍が飛ぶような自然に溢れています。けれど私が住んでいた頃にはなかったセブンイレブンが新しく出来たようで、そこはほんの少しの街の変化と言えないこともないですが、この小さな街の根本は私が居た頃と変わっていないように感じます。


ただ、やはり、年月は確実に流れており、新しく建て替えられた家の主である父と母は、着実に年老いていっているのが、嫌でもわかってしまいます。現在の父は、私の1番ハッキリとした記憶の中にある父よりもひと回りもふた回りも小さくなっており、本人はダイエットの成果だというのですがかなり痩せてしまい、半年ごと実家に帰る度に、変わらない街のなかで確かに時は流れていることを実感するのです。

母は相変わらず綺麗で、見た目にはあまり変わっていないように思えるのですが、帰省した時に一緒に買い物に行くと、昔は早く帰ろうよおと私が疲れて先に音をあげていたのに、現在ではちょっと疲れたねえとそれほど歩いていないのに休憩をとりたがる母に、確かに訪れている老いを感じずにはいられません。



高校時代までは、地元で過ごしていました。医学部に進学するために、駅前の予備校に通っていました。友達と一緒に、めんどくさいねえと愚痴をこぼしながら、夏の太陽が照りつける暑い日も、銀杏の葉が道路を埋め尽くした秋の日も、耳あてとマフラーで完全防備をしながらもスカート丈だけは短くしたまま街を闊歩した冬の日も、ただ、医学部に入る事だけを目標にして歩いていた、この道。

その頃の私たちはたった1年後の事すら想像することができませんでした。

浪人する可能性も十分にありましたし、どの県の大学に行くことになるのか、ましてやランクを落とすことになれば学部すらも、そう、確定している要素はなにひとつなかったのです。

そして幼かった私には、自分の両親が歳をとるという当たり前の事すらも考えていませんでした。というか、実感として、わかなかったのです。両親とも、今に比べたらまだ、若かったですから。

そう思うと、本当に、自由でした。そう、今思うと、何の責任もなくとても自由なのですが、当事は、ただ見えない未来に向かってがむしゃらでした。自分が自由だなんて気づくことなどなく。そして、どんなに頑張っても確定することのない未来。自由と不安を持て余した私たちは、掴めない雲のような未来を思いながら、悩み、語り、そう、青春していました。



いま、あれから7年経ちました。

地元から離れたこちらの生活にも、もう十分慣れてきています。なんなら6年間の大学生活を過ごした分、こちらの方が詳しいのです。悲しみや辛さ、楽しいことも分け合うことのできた、大切な友達もできました。



8年目、私は地元の病院を受ける予定です。


ようやく、地元に帰ります。私の故郷はどんな顔をして迎えてくれるのでしょうか。だいぶ離れちゃってたけど、温かく迎えてくれますか。私がほとんど住んでいない新しい家は、私を家族として迎えてくれますか。父と母は……きっと温かく迎えてくれるはずです。



偶然にも私の希望している病院は、私がかつて高校時代に通っていた予備校のすぐそばにあります。

きっと通勤途中には、昔の私のように、ひたすらにただ目標に向かって進む学生たちに出会う事でしょう。見えない未来に不安と希望を抱えながら、歩いている学生に。

きっと、私は、かつての自分と重なってみえて、泣くのでしょう。あの頃の私に幻滅されないようにと、頑張るでしょう。

胸を張って故郷に帰れるように、あと少しこっちで頑張るからね。待っていてください。