おやすみ、と言わせて
『おはよう』
『おはよう』
一日の始まりには、あいさつがあります。
あいさつは、ひとりじゃないから好きです。相手がいるからあいさつをする、あいさつをするときはひとりぼっちじゃありません。そこがあいさつの好きなところのひとつ。
小学生の頃は、わけもわからず『あいさつをしなさい』と先生に教えられてきました。わたしは特に何の疑問も持たずに『おはようございます』と先生に言っていました。友達にもおはようのあいさつをしていたかどうかあんまり覚えていないけれど、あまりしていなかったかな。別にあいさつがなくても、友達でいられたからです。
大人になるにつれて、あいさつをする機会が増えてきたように思います。誰かと友達になるにはまずはあいさつから始めるし、友情を維持するにもあいさつは必要なものだったりするんじゃないかなと思います。それがどうって訳じゃないけれど、『なんであいさつをしなきゃいけないの?』という疑問を持っている小学生がいるとしたら、『おとなになってから友達をつくるときにひつようだからだよ』と教えてあげたいです。
あいさつ、っていうのは、1日のなかに”くぎり”をしてくれます。
はじまりの合図、『おはようございます』。これからご飯を食べます、『いただきます』。ご飯を食べ終わりました、『ごちそうさまでした』。家に帰ってきました『ただいま』。
朝、目が覚めます。これから1日が始まります。さあ、1日をはじめよう。
『おはよう』
はじめる、というのは意外と簡単なものなんじゃないかな。1日は目を覚ましたら始められます。けれど終わらせる、というのは結構難しいように思うのです。たいていの人は1日の終わりというと眠りにつくことだと思うけれど、きちんと1日を終わらせて眠りにつくことって、最近の自分を振り返ってみるとあまりできていないんじゃないかな、と思います。それは、眠ろうと思ってないのにソファでうっかり寝てしまった仕事で疲れた夜だったり、まだやらなきゃいけない課題があるのに明日にまわした罪悪感の残る夜だったり。
わたしは、あいさつのなかで、『おやすみなさい』がいちばん好きです。
きれいに1日を終わらせられるような気がします。優しく、おやすみ、が言える日は、うまく1日が終わらせられた1日。なんとなくうまくいかない日は、おやすみも言えないようが気がします。だからわたしは、優しいおやすみが言いたい。
おやすみがあると、安心して夢の中へいけます。ひとまず現実世界はおわり、とくぎりをつけられます。たまに現実と夢がごっちゃになるから、おやすみ、でくぎりをつけたいのです。
眠りにつくとき、無性に誰かにおやすみ、と言いたくなります。そんな夜、ありませんか?ひとりぼっちが寂しい夜、独りじゃないのに寂しい夜、きれいに終わらせたい夜。一方通行でいいから、寝ててくれていいから、おやすみ、と言わせて。
『おやすみ』
『おやすみ』