世界を食べたキミは無敵。

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バリウム検査ってしんどいですか?

 バリウム検査ってやっぱりしんどいですか?

『おうつしかえ』のid:banbanさんのこのエントリ。


バリウム飲んで、そのあとを赤裸々に - おうつしかえ

以前にこのエントリを読ませて頂いて、『ああバリウム検査を受ける患者さんはこんなことに困っているんだ』と印象に残っていました。いまちょうど自分自身がバリウム検査を勉強しているので、ふと思い出したのでした。ばんばんさんは、バリウムのせいで便秘っぽくなって大変だったんですね。確かに、同じように言われる方は多いように思います。ばんばんさん、これに懲りずぜひまた健康診断受診されてください笑!

 

バリウム検査、という言葉に反応してしまう

こんな風にやっぱり医療関係のエントリにはアンテナがぴこん!と反応してしまいます。みなさんも自分の仕事関係のエントリには敏感にアンテナが反応しませんか?私がワーカホリックだからかな??

 

私はバリウム検査を受けたことはありませんが、バリウム検査をしたことはあります。オーベンが横に座って、私がバリウム検査で使う機械を操作するのをじっと監視しています。

 

はい、じゃあそこでバリウムをひとくち飲んでくださいね~

とマイクで患者さんに言います。

マイクが入っていない時に、『おい、この方は一口の量が少ない方なんだ。そういうのをちゃんとみて、少し多めにバリウム飲んでくださいと微調整しろ。マニュアル通りに読んだだけではダメだ』『はい』

 

そこで左向きに回って頂きます

とマイクで患者さんに言います。

マイクを切った途端に、『おい!この方の胃の形は左に回さなくても写真とれるだろ!ストップさせろ!

『あ、はいそこで一度止まって頂きます~~!!』

 

当たり前ですが、ベテランのオーベンが行うのと同じ精度が求められます。オーベンがやってわかる病変を、私ではわからなかった、なんてことは許されませんからね。きちんとオーベンの監視のもと、オーベンが行うのと同じレベルの検査をしなくてはなりませんから、横から常に指導が入り続けます。

 

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バリウム検査って結局なんなの?

いわゆる健康診断で受けるバリウム検査というのは、専門用語で『上部消化管造影検査』といいます。

上部消化管とは、食道~胃~十二指腸までのことを指します。口からおしりまでの長い消化管の、上の方ということですね。逆に大腸のことは下部消化管といいます。

で、造影というのがバリウムのことです。バリウムはレントゲンで見ると白く映ります。このバリウムが白く映るという特徴とバリウム自体の重さを利用して、胃の中などに怪しいものがないかどうかを調べる検査がバリウム検査になります

 

バリウムを飲むと、まずその重さで胃の壁が引き伸ばされます。何も異常がなければびよーんと均等に胃の壁が伸びるのですが、たとえば癌などがあると胃の壁の伸びが悪くなります。その伸び具合を、くるくると患者さんに体位を変えてもらって、胃のいろんなところを伸ばしてみて、病変がないかをみているのです。

また、重要なのは、バリウムが一度とおって薄く胃の壁につくことです。きれいに薄くバリウムが『のる』と、胃の中のひだひだの輪郭がくっきりと浮かび上がります。そこで潰瘍がないか、ひだが太くなったりしているところはないか、などをみています。バリウムがたぷん、と胃に溜まっている様子も重要ですが、そのバリウムが一度ついて流れた後の部分にもう一度空気をためて観察するのがこのバリウム検査の重要な部分です。(これを専門用語では空気とバリウムの二重造影といいます。)

検査している側は、いろんな胃の形にあわせてバリウムをうまく流していい写真を撮ろうとします。胃の形って本当千差万別で、縦にびよんと伸びている胃下垂だったり、お辞儀をしているような瀑状胃と呼ばれる形だったり、さまざまな形があります。形が違えばバリウムの流れ方も変わるので、マニュアル通りではダメなんですね。そのために患者さんに右にまわるだの台を倒すだの、くるくると体位変換をして頂いてるのです。

 

ちんたらしていると、バリウムがどんどん下の方へ流れて行ってしまいます。そうすると写真で胃以外の部分も白く映ってしまって、見たいところにかぶるんですね。重要なところがみえなくなるので、検査にはスピードが求められます。一度下の十二指腸の方へ流れてしまったバリウムは戻せませんので、検査中にはよく『覆水盆に返らず』という言葉が頭のなかで点滅しています。『バリウム胃に戻らず』。

 

バリウム検査、検査する側は意外と忙しいんです

このスピードをあげることが意外と難しいというお話をします。

 

バリウム検査には、同時にあらゆる動作を求められます

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うちの機械の場合、まず右手で主となるカメラの位置操作をします。同時に撮影ボタンも右手にあります。写真のズームボタンも右手で操作します。

左手で患者さんのベッド倒す操作をします。そして撮影時には被ばく量を減らすために写真を絞るのですが、そのしぼり操作も左手でします。

右足にはペダルがあり、これで透視写真をだします。ずっと踏みっぱなしでは被ばく量が増えますから、なるべく踏む頻度は少なく抑えます。

左足にもペダルがあり、これを踏んでいる間はマイクがONになります。この右足と左足のペダルを逆に踏んでしまうと大変なことになります。右足の透視ペダルばかりに集中して、うっかり左足のマイクペダルを踏みっぱなしにしてしまうと、オーベンの指導の声が部屋に響いてしまいます。

 

視線を移す場所は主に3か所あります

ひとつは患者さん。苦しそうにしていないか、きちんと指示通りの体位変換ができているか、いろいろ見ます。

機械には画面が2つあり、ひとつはリアルタイムで見ている画像、もうひとつは撮った写真の画像です。リアルタイムで見て、パシャっと撮って、できた写真をよくみて怪しいところがあれば体位変換などして同じ場所をもう一度みなくてはなりません。

この2つの画面をいったりきたりして病変を探しつつ、常に患者さんの状態もみておく必要があります。

両手両足の操作と、視線3か所、意外と忙しい検査なんですね。

 

バリウム、頑張る

胃の中を見る検査といったら、バリウム検査の他に『胃カメラ』(正確には上部消化管内視鏡検査、といいます)が有名ですね。『胃カメラがあるならバリウムは必要ないの?』と思われるかもしれません。

 胃カメラは確かに胃の中を直接見るので、病変を確実にみられます。胃の粘膜のただれとか、色調とか、そういったものに強い検査です。バリウム検査の強みは、上に書いたように壁の伸び具合など、胃の柔らかさを調べるのに強い検査です。胃のおおまかな形だったり、胃に重さをかけて動きをみたりするができます。しんどさがどちらが上かといわれると人によるかもしれませんが、一般的にバリウムの方が少ないでしょうか。それぞれ強みが異なっているので、どちらがいいと一概にいうのは難しそうです。一般的にはバリウム検査でひっかかったら胃カメラ、というのが多いでしょうかね。胃カメラバリウム検査の完全上位互換の検査、というわけではないんですね。

 

今後、バリウム検査を受ける皆様へ

バリウム検査は、バリウム飲むのもしんどいでしょうし、くるくる回されて時間がかかるとイライラされるかもしれません。けれど、時間がかかるのはじっくりみている証拠、だと思って、どうぞ15分ほどこらえてください。しっかり異常がないか、みさせて頂きます(*- -)(*_ _)そして私自身も機会があれば一度飲ませて頂くべきでしょうね。

 

以上ちょっと長いバリウムのお話でした。読んでいただき、ありがとうございました。